フラゼトSS「しのぶれど」

どうも、とべないインコ〜(・ε・つ です。

またフラゼトSSの移植だよ!どうぞ!(前置きが長い病なのでちゃっちゃと始めることにしたよ!!)


しのぶれど(フラ×ゼト) (「下恋」の続きです。)


「書類仕事を捌いているうちにすっかり寝てしまうとはな…。起こしてくれてありがとう、フランツ」ゼトは苦笑いを浮かべながら見回りの少年騎士にそう言った。

「いえ、当然のことです。でも、将軍ほどのお人でも『ついうとうと』なんてことがあるんですね」小さく笑ったのと一緒にオイルランプの火が上下に揺れる。彼らは肩を並べて、夜更けの廊下をゆっくり引き返していた。

フランツが「自分が灯りを持っていることだし、まだ見回りもあるから」と言って、ゼトを彼の自室まで送ると申し出たのだった。


「ははは、私を一体何だと思っているんだ…私だって人間だぞ」

「あはっ、ちょっと親近感が湧きます」親近感どころか愛らしいとまで思っているのだけど、と心の中で付け足す。

「でも今日の見回りが君で良かった。フォルデ辺りだったらこれをネタにサボりに励まれかねない」

「確かに兄さんなら考えそうなことですね。ふふっ」若者二人は夜の静寂を壊さぬよう、控えめに笑い声を零した。

騎士団長として王室に仕え、忠義の限りを尽さんとする姿も好きだ。かつての戦争のときのように、軍の先陣を切って並み居る敵を薙ぎ倒してゆく勇敢な姿も好きだ。

だがフランツは、ゼトのこんな姿が、気の置けない友人にするように、何気ない軽口を叩きながら屈託なく笑ってくれる姿が何よりも好きなのだ。


気がついたときにはもうゼトの部屋の目の前だった。

「もう着いてしまったか。楽しい時間はあっと言う間だな」

そんなことを言われたら、またほんの少しだけ期待してしまう。

「…僕も将軍とお話できて楽しかったです。今夜は夢見が良さそうだなぁ」

後ろ髪を引かれる思いだが、従順な後輩騎士としての自分がギリギリのところでそれを押し殺した。

「それではゼト将軍、お休みなさい。貴方も良い夢を」向き直り軽く一礼する。今、自分はちゃんと微笑むことができているのだろうか。フランツにはわからなかった。


「待て、フランツ。顔を上げてくれ」

頭上から落ち着いた優しい声が降り注いだ。

「何でしょうか?」

おずおずと見上げた。声色と裏腹に、男は硬い表情で、真剣な眼差しを少年に向けている。

「まだ見回りの交代まで時間はあるな?私の部屋でもう少し話をしていかないか」

思わぬ一言に吃驚してしまって声が出せない。金魚のように口をパクパクしているフランツにゼトは続けてはっきりと言った。

「…私も、君と同じ夢を見ても良いだろうか」


「お邪魔しま〜す…」

「律儀なヤツだな。どうぞ」

燭台の蝋燭に火を点けながらにこりと笑う。部屋がぼんやりと明るくなり、目には調度品が飛び込んでくる。机と椅子一組、飴色のキャビネット、壁際のクローゼットと簡素なベッドぐらいしかない辺りが部屋の主の性格をよく表している。

ゼトは見回り用のオイルランプを受け取ってキャビネットの上に立てた。切れ長の瞳に埋め込まれたルビーは、次の言葉を探して少し焦りの色を浮かべていた。

「立ち話も何だから…ベッドにでも腰掛けてくれ」


「ぼすん」と音を立てて金髪の少年は小ぶりの尻をシーツの海に沈めた。じっとしたままゼトの動きを上目がちに追いかける姿は、さながら飼い主の帰りを待っている子犬のようである。そのうち早足でゼトはベッドにやってきて、フランツの真横に座った。

「待たせたね、フランツ」

脈拍は際限を知らず高まっていく。震える唇からゆっくりと言葉を紡ぎ出した。

「…さっきのお言葉の意味、僕でもわかるように、教えてもらえますか。」

尋ねられた男は、少し躊躇った後、言葉もなく少年を抱き寄せた。重なる心音がすべてだった。

「こういう、事さ」

「本当に…?本当、ですか…?」

「ああ」

「夢みたいです」

フランツは強くゼトを抱きしめ返した。ほっとしたのか、幼さの残る顔からは次第に涙やら鼻水やらが溢れてはじめている。

「はは、まるで子供みたいだぞ」

「だって、だって…」

「…全ては、私が悪かったんだ。狡い大人ですまない」


フランツは不思議に思ったがすぐに気づいた。

「あっ!まさか」

「ノックで目が覚めたんだ。そのあと面白いお祈りが聞こえてきて、すぐに君だとわかったよ」

ゼトはフランツと顔を突き合わせて悪戯っぽく笑った。

「もう。狸寝入りなんて、お人が悪いんですから…ちょっと恥ずかしくなってきました」

「こんなことを言うのは柄でもないが…聞いていてときめいたよ」

そう言って細めた目は、騎士団の後輩ではなく、恋人として彼を見つめていた。

「これからは、私を追いかけるんじゃなくて一緒に横を歩いてほしいな」

「もちろんです!あっ、でも…騎士としては僕、100年かかっても将軍に追いつけないかも…」

「おいおい、それは追い越すぐらいの心意気で頼むぞ」


秋の夜はまだまだ長い。


「…で、ホントにお前はゼト将軍の書類仕事を手伝ってて、途中で見回り当番ほっぽっちゃったワケ?」

「もう、しつこいです兄さん!交代を忘れたことについては何度も謝ってるじゃないですか!それとも、僕が将軍のお手伝いをしていたというのが疑わしいんですか?」


真面目な弟がサボりをした裏には絶対何かあるだろう。そう思ったフォルデは朝からフランツを追いかけまわしていた。

「もういい加減にしたらどうだ、フォルデ」

「あっ!ゼト将軍!おはようございます!」

「おはよう、フランツ」


間の悪い登場に面食らいながらフォルデも挨拶の言葉をかけようとしたが、既にゼトはフランツと話を弾ませていた。

(やれやれ、いつもながら二人揃うと俺は蚊帳の外だねぇ…)


「ん?」


話し込む二人の顔を交互に見比べているうち、勘の良い兄は何かを察したらしい。

「ほぉーん…良いんじゃない?」

「何か言いました、兄さん?」

「いやぁ、その…どうせサボるなら思いっきり満喫したら?何なら、たまにはお兄ちゃんが見回りの順番代わってあげるから」

ニヤけ顏のフォルデに、二人はこの手のことで彼には敵わないと悟るのだった。-END-



三点リーダーとか(以下略)。オフ(というか素?)のゼトさんのウィットに富んだ喋り方、ちゅき。それでは。

とり小屋

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