フラゼトSS「下恋」

どうも、とべないインコ〜(・ε・つ です。

書架のフラゼトを置きっぱなしだったんですが、そのままだと読みづらいな〜と思ったのでこっちに持ってきました。

いい加減続きを書きたいのですが、エフゼトやヴァルゼトも見たい僕がいるせいでなかなか書けてませ〜ん(汗)クガゼトもいいねッ!!...総受け。

とは言いながら、今手元で一番できてるのはゼトエイだったりします。分身できるようになれば全部描(書)けるのに...。

前置きが長くなりましたね。それではフラゼトSSどうぞ!



「下恋」(フランツ×ゼト)

夜も更け、草木も眠る頃。

日のあるうちは目まぐるしく動き復興に勤しんでいるルネス王室も、流石にすっかり静まり返っている。

皆各々に割り当てられた部屋で、明日のためにぐったり疲れ果てた体を休めており、王宮内に灯る明かりといえば見回り当番の少年騎士が持つオイルランプぐらい…のはずだった。


(ふわぁ…眠いなぁ…)

仮眠後、寝癖を直さずに出てきた柔らかな金の猫っ毛には、「もふもふ」というオノマトペがよく似合いそうである。雨降り前の子猫のように顔をごしごしこすった少年騎士——フランツは、翡翠の双眸をくっと見開いた。

(だめだフランツ!騎士の叙勲を忘れたのか!?眠気なんかに負けていられないぞ…)気合いを入れ直して、秋の夜長の冷え込む廊下を「カツカツ」…いや、「もふもふ」と歩き進める。

フランツの歩みと共に揺らめくランプは夜闇を翻してゆき、やがて青い月のベールと融け合って見えなくなった。廊下の突き当たり、執務室前のステンドグラスまで来たのだ。

さて異常はないな、と踵を返したその時だった。ふと目をやった執務室の扉の小さな透かしの先に、ぼんやりと薄明かりが見えるのだ。

(誰か、いる…?)


しかし、そっと透かしを覗きこんでも人が動いている様子は見受けられないし、書き物などをしている音も聞こえてこない。もしかしてユーレイじゃないの、なんて非現実めいた考えが頭をよぎる。フランツは冗談じゃない、と自分で自分にツッコんでみたものの、それに反して思わず背筋を震わせてしまった。

(まだ寝ボケてるからそんなこと考えちゃうんだよ!何にしても、見回り当番として執務室を確認しなくちゃ…!)

すう、と深呼吸したフランツは、扉を軽く二度ノックしてみた。


…返事はない。


それでも木の板一枚挟んだ向こう側の薄明かりは変わらず灯っており、フランツはとうとうマズい予感がした。

「ひえぇ…神様仏様ゼト将軍、あっあと兄さん…僕は覚悟を決めます…!」少年はブツブツ唱えながら、左手でランプを握りしめ、いつもより重く感じられる扉をゆっくりと開いた。


一歩ずつ確かめるように暗闇を歩く。ひどい底冷えに肌が粟立つのを感じた。あの風に煽られカタカタと不気味な音を立てる木窓から外の冷気が浸み出しているのだろうか。

件の薄明かりの元へ辿り着くと、長い時間点けられているらしく大分ちびた蝋燭が書き物机の上で控え目に燃えている。心霊現象の類でなかったことにホッと胸をなでおろしていると、フランツの目はじりじり照らされている紅蓮色の髪に吸い寄せられた。

「…ゼト将軍?」

耳をそばだてると重なった腕の隙間からすうすうと小さな寝息が聞こえてきた。どうやら彼は、夜なべして執務をこなしている途中で眠ってしまったらしい。

「んん…」自分を呼ぶ声に反応したのか、ゼトは腕に埋めている頭をフランツのいる側に向き直した。ほのかな蝋燭の火で、彼の精悍な顔立ちがぼんやり浮かび上がる。

白磁の儚さ。フランツは美しさを感じずにはいられなかった。日頃目にする若将軍は品行方正で、いかにも騎士らしい立居振舞いをしているだけに、無防備に眠る姿はあどけなくさえも思えた。


敬愛する騎士の新たな一面を自分だけが見つけられた喜びを、フランツはじっくりとかみしめた。机の横に屈み込み、しばらく机の上の至宝に見惚れていたが、北風で揺れる木窓の音で、フランツは再び現実へ引き戻された。

(このままこんな寒い部屋で将軍を寝かせるわけには…早く起こさなきゃ!)若干の名残惜しさがあるが、大好きな将軍が万一風邪などを引いて、しばらく顔を見られないのはもっと悲しい。

…でも。

振り払えない躊躇いが彼の思考を鈍らせる。

フランツは、自分の中に敬愛を超えた思いが芽生えていることを自覚していた。

目が合うとき、声をかけられたとき、それが自分を駆り立てようとすることも。


(起こす前に、少しだけなら)

バクバクと心臓が高鳴る。静かに机の正面へ回り、少し男らしくなってきた右手をゆっくりと伸ばした。

「いつも、お疲れ様です。ゼト将軍」フランツは、小さないきものにするように、サラサラの髪を優しく撫でながら呟いた。

ゼトはぴくりとも動かない。


彼の耳に届かない今ならば、愛を囁くことも許されるだろうか。

頭で考えるよりも先に、震える唇から辿々しい言葉が溢れ出していた。

「僕は、貴方を愛しています。騎士としての貴方も、一人の人間としての貴方も。受け入れられることがなくてもいいのです…。ただ、いつまでも…貴方の背中を追いかけていたい…」


覚悟はしていた。それでも言い終えたとき、切なさで胸が張り裂けそうだった。

フランツにはわかっていた。この恋は、決して叶ってはいけないと。知られることもなく、泡沫のように消えることが、自分が傷つかないため、そして想い人の幸せのためなのだ。


(…これで、いいんだ)

ため息をつきそうになったが、いつか兄が言っていた『ため息をつくと幸せが逃げる』なんてジンクスを思い出して、慌てて両手で口を押さえた。

今、手の中にある幸せまで逃したくないから。

「将軍、起きてください」少年騎士はいつものように明るい調子で声をかけた。-END-



今見返すと三点リーダーの個数とか色々気になるところですが、これはこれっちゅーことでお許しくださいませ。てへ。それでは〜。

とり小屋

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